本記事にはプロモーション(広告)が含まれます。税率・保険料・設立費用は国税庁・日本年金機構・国土交通省などの公表資料をもとに記載しており、報酬の有無によって内容を変えることはありません。詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。
売上が伸びてきて、税金の額に驚いた。元請から「そろそろ法人にしたら」と言われた。一人親方が法人化のタイミングを考えるきっかけは、たいていこの2つです。ただ、ネットでよく見る「所得○○万円を超えたら法人化」という目安は、社会保険料の負担増を計算に入れていないことが少なくありません。
この記事では、1級土木施工管理技士で、ゼネコンの施工管理を約10年経験した運営者が、所得税と法人税の税率、社長1人でも必要になる社会保険、設立費用、消費税・インボイス、建設業許可までを一次情報で確認し、「自分の場合はどうか」を考えるための比べ方を整理します。
この記事の要点
- 「所得がいくらなら得か」は一律に決まらない。税金と社会保険料の合計で比べる
- 所得税は5〜45%の累進課税。中小法人の法人税は年800万円以下の部分が15%(令和9年3月31日までに開始する事業年度)
- 法人は社長1人だけでも健康保険・厚生年金に加入が必要(日本年金機構)。保険料はおおむね役員報酬の約3割で、会社負担分も自分の会社の資金から出る
- インボイス登録をすると消費税の「設立2年免税」の効果は薄い。個人なら令和9・10年分に使える3割特例は法人には使えない
- 法人化の前に、青色申告65万円控除・小規模企業共済・経営セーフティ共済で税負担を下げられないか確認する。最終判断は税理士に試算を依頼する
法人化で得をするかどうか、自分の数字で税理士に試算してもらう
この記事の対象読者
大工・とび・左官・内装・設備・土工などで、人を雇わずに仕事を請けている一人親方の方を想定しています。特に、売上や所得が伸びてきた方、元請から法人化や社会保険の加入を求められた方に向けた内容です。記載内容は2026年10月20日時点の公表資料にもとづきます。
法人化のタイミングは「4つのきっかけ」で考える
一人親方の法人化は、税金だけで決める話ではありません。建設業では、次の4つのどれに当てはまるかで、急ぐべきかどうかが変わります。
| きっかけ | 法人化で解決するか | 先に確認すること |
|---|---|---|
| 所得が伸びて税金が重い | 解決する場合もある | 社会保険料を含めた試算。青色申告や共済で足りないか |
| 元請から法人化を求められた | 理由による | 元請が求めているのが「法人」なのか「社会保険加入」や「許可」なのか |
| 500万円以上の工事を請けたい | 法人化だけでは解決しない | 建設業許可の要件。許可は個人でも取れる |
| 人を雇う・取引先を広げたい | 信用面で効くことが多い | 雇用に伴う社会保険・労働保険の負担 |
以下、税金、社会保険、建設業に固有の論点の順に見ていきます。
税金の違い:個人は累進課税、法人は15%からの段階税率
個人の所得税は5%から45%まで上がる
一人親方の事業所得には所得税がかかります。所得税は、課税される所得が多いほど税率が上がる超過累進税率です(国税庁 タックスアンサーNo.2260)。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円〜194万9,000円 | 5% | 0円 |
| 195万円〜329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
| 330万円〜694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
| 695万円〜899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
| 900万円〜1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
| 1,800万円〜3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
| 4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
※このほか復興特別所得税(所得税額の2.1%)がかかります。国税庁の速算表(令和8年4月1日現在)より。
所得税に加えて、個人住民税(所得割は標準税率10%)がかかります。さらに、請負業などは個人事業税の対象で、税率は5%、事業主控除は年290万円です(東京都主税局「個人事業税」。業種の区分は都道府県に確認してください)。
中小法人の法人税は800万円以下の部分が15%
資本金1億円以下の中小法人では、所得のうち年800万円以下の部分に15%の軽減税率が適用されます。800万円を超える部分は23.2%です(国税庁 タックスアンサーNo.5759、中小企業庁「中小企業の法人税率の軽減」)。
| 法人の所得 | 法人税率 | 補足 |
|---|---|---|
| 年800万円以下の部分 | 15% | 平成24年4月1日から令和9年3月31日までに開始する事業年度が対象(所得が年10億円を超える事業年度は17%) |
| 年800万円を超える部分 | 23.2% | ― |
軽減税率には適用期限があります。令和9年4月1日以後に開始する事業年度の扱いは、今後の税制改正で決まります。法人化を検討する時期に、税理士に最新の扱いを確認してください。
法人には法人税のほか、地方法人税・法人住民税・法人事業税がかかります。なかでも注意したいのが法人住民税の均等割です。所得に関係なく、赤字でもかかります。標準税率の最も小さい区分は、道府県民税2万円・市町村民税5万円で、合計年7万円です(総務省「法人住民税・法人事業税」)。
法人化で効くのは「給与所得控除」と「所得の分散」
法人化すると、自分は会社から役員報酬を受け取る形になります。役員報酬は個人の給与所得になり、給与所得控除を差し引けます。令和8年分・令和9年分の給与所得控除は、最低74万円、上限195万円(収入850万円超)です(国税庁 タックスアンサーNo.1410)。
一方で、役員報酬は好きなときに増減できません。法人税で損金にできるのは、原則として毎月同じ額の定期同額給与で、改定は事業年度開始から3か月以内などに限られます(国税庁 タックスアンサーNo.5211)。「今月は儲かったから多めに取る」という使い方はできない点に注意してください。
社会保険の違い:法人は社長1人でも強制加入
法人化でいちばん見落としやすいのが社会保険です。日本年金機構は、法人事業所について次のように案内しています。
「法人事業所の場合、常時雇用される者が1人以上(事業主含む)いれば、社会保険に加入しなければなりません。」(日本年金機構「年金Q&A」)
つまり、従業員がいなくても、役員報酬を受け取る社長1人だけの会社でも、健康保険と厚生年金保険に加入が必要です。個人の一人親方のように、国民健康保険と国民年金のままでいることはできません。
| 項目 | 個人の一人親方 | 法人(社長1人) |
|---|---|---|
| 医療保険 | 国民健康保険、または建設国保などの国民健康保険組合 | 協会けんぽなどの健康保険(条件を満たせば国保組合を続けられる場合あり) |
| 年金 | 国民年金(令和8年度は月17,920円) | 厚生年金保険(保険料率18.3%) |
| 保険料の決まり方 | 国保は所得などをもとに市区町村ごとに計算。上限額あり | 役員報酬の額(標準報酬月額)に料率をかける |
| 主な給付の違い | 年金は基礎年金のみ | 厚生年金の上乗せ。健康保険の傷病手当金・出産手当金 |
厚生年金と健康保険の保険料は、会社と本人で半分ずつ負担します。ただし、社長1人の会社では会社負担分も本人負担分も、結局は自分が稼いだお金から出ます。ここが「法人化したのに手取りが減った」となる最大の原因です。
試算例:役員報酬が月50万円の場合
協会けんぽ東京支部の令和8年度の料率で、労使合計の保険料を計算すると次のとおりです。
| 年齢 | 合計の料率 | 保険料(月) | 保険料(年) |
|---|---|---|---|
| 40歳未満 | 28.38% | 141,900円 | 1,702,800円 |
| 40〜64歳 | 30.00% | 150,000円 | 1,800,000円 |
※標準報酬月額50万円で計算。健康保険9.85%(東京都)、子ども・子育て支援金0.23%、厚生年金18.3%、40〜64歳は介護保険1.62%を加算。賞与分は含みません。料率は都道府県ごとに異なります(全国健康保険協会、厚生労働省)。
個人のままなら、国民年金は年215,040円(月17,920円×12か月)で、これに国民健康保険料が加わります。国保料は市区町村や家族構成で大きく変わるため、お住まいの市区町村の計算方法で比べる必要があります。
保険料が増える代わりに、厚生年金の分だけ将来の年金が増え、病気やケガで働けないときの傷病手当金が受けられるようになります。負担の増加をそのまま「損」と見るか、保障の上乗せと見るかは、年齢や家族の状況で変わります。
建設国保に入っている人は要確認
建設国保などの国民健康保険組合に加入している場合、年金事務所で健康保険の適用除外の承認を受けると、法人化後も国保組合を続けられる仕組みがあります(長野県「適切な保険について」。国土交通省の下請指導ガイドラインにもとづく整理)。承認には条件や手続きの期限があるため、加入中の組合と年金事務所に、法人を設立する前に確認してください。
所得別に見る「税金と社会保険」の比べ方
ここまでをまとめると、法人化の損得は「税率が下がる効果」と「社会保険料が増える効果」の綱引きです。下の表は、個人のときの課税所得ごとに、どんな傾向になりやすいかを示した考え方の目安です。具体的な金額は、家族構成・経費・役員報酬の決め方・お住まいの自治体で変わります。
| 個人の課税所得 | 所得税+住民税の税率 | 法人化の傾向 |
|---|---|---|
| 330万円未満 | 15〜20% | 税率の差が小さい。社会保険料の増加が上回り、手取りが減るケースが多い。まず青色申告と共済を使い切る |
| 330万〜695万円未満 | 30% | 役員報酬の額しだい。社会保険料を含めると差がほとんど出ないか、逆転することもある |
| 695万〜900万円未満 | 33% | 会社に利益を残せる(生活費が報酬の範囲で足りる)なら、税の差が出やすくなる。試算する価値が高い |
| 900万円以上 | 43%以上 | 法人税15%との差が大きい。社会保険料を含めても、検討の本命になりやすい |
※税率は所得税と個人住民税(10%)の合計で、復興特別所得税と個人事業税は含みません。個人事業税(5%)がかかる人は、その分だけ個人のままの負担が重くなります。
表の境目は「必ずこうなる」線ではありません。たとえば、課税所得が大きくても、生活費のために利益のほとんどを役員報酬で受け取るなら、会社に残る利益は少なく、法人税率の低さはあまり効きません。逆に報酬を低く抑えて会社に利益を残すと、そのお金は会社のお金であり、自由に個人の生活費には使えません。
税理士に試算を頼むときの3ステップ
- 今の負担を出す:直近の確定申告書から、所得税・住民税・個人事業税・国保料・国民年金の合計を出す
- 役員報酬を仮に決める:生活に必要な手取りから逆算して役員報酬を決め、その報酬にかかる所得税・住民税と、社会保険料(労使合計)を出す
- 会社側を足す:会社に残る利益にかかる法人税など、均等割(最低年7万円)、税理士の顧問料、設立費用を足して、1の合計と比べる
この比較は、少なくとも2〜3年分で見るのがおすすめです。設立費用は初年度だけ、均等割や顧問料は毎年かかるためです。
法人化のメリット・デメリット
| 観点 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|
| 税金 | 所得が大きいと法人税率の低さが効く。役員報酬に給与所得控除が使える | 赤字でも均等割(最低年7万円)がかかる。軽減税率には適用期限がある |
| 社会保険 | 厚生年金で将来の年金が増える。傷病手当金などの保障が厚くなる | 社長1人でも加入が必要。保険料は役員報酬のおおむね3割で、全額が自分の会社の負担 |
| 取引・信用 | 法人であることを取引条件にする元請・発注者にも対応しやすい | 法人化しただけで受注が増えるとは限らない |
| お金の管理 | 会社と個人のお金が分かれ、経営状況が見えやすい | 役員報酬は原則として期中に変えられない。会社のお金を自由に使えない |
| 事務・費用 | 経理の仕組みを整えるきっかけになる | 設立費用、法人の決算・申告、社会保険の手続き、税理士費用がかかる |
建設業ならではの判断材料
元請から法人化を求められたとき
まず確認したいのは、元請が本当に求めているものは何かです。法律上、一人親方が法人になる義務はありません。元請の立場では一般に、次のどれかを気にしていることが多いと考えられます。
- 社会保険にきちんと加入しているか(現場入場の条件)
- 500万円以上の工事を発注できるか(建設業許可)
- 取引先として継続性・信用があるか(社内の取引先審査)
国土交通省の「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」(令和7年12月10日改訂)は、元請企業に対し、適切な社会保険に加入していることを確認できない作業員は、特段の理由がない限り現場入場を認めない取扱いを求めています。一人親方の場合、国民健康保険(または国保組合)と国民年金に加入していれば「適切な保険」に当たります。
注意したいのは、法人化したのに健康保険・厚生年金に入っていない状態です。これは法人として「未加入」となり、かえって現場に入りにくくなります。法人化と社会保険の加入手続きは、必ずセットで進めてください。
また同ガイドラインは、実態が雇用に近い一人親方については、雇用関係への誘導を求めています。元請の求めが「働き方の見直し」である場合は、法人化ではなく雇用される働き方が合っていることもあります。
500万円以上の工事は「建設業許可」の問題
建設業許可がなくても請けられるのは軽微な建設工事だけです。建築一式工事以外では、1件の請負代金が500万円未満(消費税込み)の工事です。建築一式工事は1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事です(国土交通省「建設業の許可とは」)。
許可は個人でも法人でも取れます。法人化すれば許可が取れるわけではなく、経営業務の管理、営業所技術者等、誠実性、財産的基礎(一般建設業は自己資本500万円以上など)、社会保険の加入といった要件を満たす必要があります(国土交通省「許可の要件」)。
すでに個人で許可を持っている場合は、令和2年10月から、個人から法人への「法人成り」でも事前の認可を受ければ許可を引き継げるようになりました。申請は承継予定日の90日前までが目安とされています(関東地方整備局の手引き)。認可を受けずに法人化すると、法人として許可を取り直すまで、軽微な工事しか請けられない空白期間が生じるおそれがあります。
建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録
CCUSでは、事業者ごとに事業者登録を行い、技能者は所属事業者の事業者IDとひも付けて登録します(国土交通省監修「建設キャリアアップシステム 下請事業者向け手引き」)。個人事業主として登録している場合、法人化すると事業者としての登録内容や技能者の所属を見直す必要が出ます。現場でのカードタッチや施工体制の登録に影響しないよう、法人化の前にCCUSの窓口で手続きを確認しておきましょう。
消費税とインボイス:「2年免税」はあまり当てにしない
資本金1,000万円未満で設立した法人は、設立1期目・2期目に基準期間がないため、原則として消費税の納税義務が免除されます(資本金1,000万円以上だと免除されません。国税庁 タックスアンサーNo.6503)。ただし、2期目は特定期間(原則として1期目開始から6か月)の課税売上高と給与等支払額がどちらも1,000万円を超えると課税事業者になります(同No.6501)。
より大きいのはインボイスとの関係です。元請との取引でインボイス(適格請求書)が必要な場合、法人でも登録を受ければ、その時点から課税事業者になります。つまり、インボイス登録をするなら「設立2年は消費税ゼロ」という法人化のメリットはほぼ使えません。
さらに、令和8年度税制改正で、インボイス登録を機に課税事業者になった個人事業者は、令和9年分・令和10年分の申告で納税額を売上税額の3割にできる「3割特例」が使えます(国税庁)。この特例は個人事業者向けで、法人には適用されません。2割特例も、個人は令和8年分の申告で終わります。インボイスの改正内容は一人親方のインボイス、2026年10月からの改正点で詳しく解説しています。
労災の特別加入も見直す
一人親方として労災保険に特別加入している場合、法人化後にどの区分で加入するかを確認する必要があります。加入している特別加入団体や労働局に、法人化の予定を伝えて相談してください。特別加入の仕組みは一人親方の労災保険・特別加入にまとめています。
法人化の前に検討したい3つの選択肢
「税金を下げたい」が主な理由なら、個人のままでも使える制度があります。法人化の試算をする前に、これらを使い切っているか確認しましょう。
| 制度 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除 | 複式簿記で記帳し、e-Taxで申告するか優良な電子帳簿で保存すると最大65万円を所得から控除(国税庁No.2072) | 期限内の申告が必要。要件を満たさないと55万円・10万円になる |
| 小規模企業共済 | 掛金は月1,000〜70,000円で、全額を所得控除できる。建設業は常時使用する従業員20人以下が対象(中小機構) | 退職金のための積立。早期に解約すると元本割れすることがある |
| 経営セーフティ共済 | 掛金は月5,000〜20万円で、個人は必要経費、法人は損金にできる。積立は800万円まで。取引先の倒産時に掛金総額の10倍(最高8,000万円)まで無担保・無保証人で借入可(中小機構) | 2024年10月1日以降に解約して再加入した場合、解約日から2年を経過する日までの掛金は経費にできない。解約手当金は受け取った年の収入になる |
小規模企業共済は会社の役員も加入できるため、法人化した後も続けられる制度です。法人化した場合の契約の扱いは、中小機構に確認してください。
法人化の手順と設立費用
株式会社と合同会社の設立費用
一人親方の法人化では、株式会社か合同会社を選ぶのが一般的です。主な法定費用は次のとおりです。
| 費用 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 資本金の0.7%(最低15万円) | 資本金の0.7%(最低6万円) |
| 定款認証の手数料 | 資本金100万円未満は3万円、100万円以上300万円未満は4万円、それ以外は5万円 | 不要(持分会社の定款は認証を必要としない) |
| 定款の印紙税 | 紙の定款は4万円 | 紙の定款は4万円 |
※国税庁 タックスアンサーNo.7191・No.7141、日本公証人連合会「定款認証」より。電子定款にすると印紙税はかからないのが一般的です。このほか、謄本代や印鑑の作成費、司法書士などに依頼する場合の報酬がかかります。
法定費用だけで比べると、株式会社は約18万〜24万円、合同会社は約6万〜10万円が目安です。合同会社は費用が安く、意思決定も簡単です。一方で、取引先によっては株式会社のほうが通りやすいと感じる場面もあるため、元請や主な取引先の考え方も参考にしてください。
法人化の流れ
- 税理士に試算を依頼する:税金と社会保険料の合計で、個人のままと比べる。役員報酬の額と決算月もここで決める
- 建設業許可・CCUS・労災・建設国保を確認する:許可がある人は法人成りの認可申請の時期を逆算する
- 会社の基本事項を決める:会社の種類、商号、本店所在地、事業目的(請ける工事の種類が入るように)、資本金
- 定款を作成し、株式会社は公証役場で認証を受ける
- 資本金を払い込み、法務局で設立登記をする
- 税務署・都道府県・市区町村へ法人設立の届出をする。青色申告の承認申請、インボイスの登録申請も忘れずに
- 年金事務所で社会保険の新規適用届と、自分の資格取得届を出す
- 個人事業の廃業届を出し、契約・口座・請求書の名義を切り替える:元請との契約書や、安全書類の事業者名も変わる
新たに設立した法人がインボイスの登録申請をする場合、設立した課税期間中に申請すれば、設立日にさかのぼって登録を受けられます(国税庁「新たに事業を開始した個人事業者・新たに設立された法人の登録」)。元請への請求に空白ができないよう、設立と同時に準備しておきましょう。
法人化の試算から設立後の決算まで任せられる税理士を探す
相談するときは、直近2〜3年分の確定申告書、国保料の通知、建設業許可の有無、元請から求められている内容をまとめておくと、試算が早く正確になります。建設業の取引に慣れた税理士かどうかも確認しましょう。
よくある質問
売上が1,000万円を超えたら法人化したほうがいいですか
売上1,000万円は、個人の消費税の免税点の目安としてよく出てくる数字です。ただし、インボイス登録をしている一人親方はすでに課税事業者なので、この数字は法人化の判断にあまり関係しません。法人化の判断は、売上ではなく、経費を引いた所得と社会保険料を含めた負担で考えてください。
元請に「法人にしないと取引できない」と言われたら、従うしかないですか
法人化は法律上の義務ではありません。まず、元請が求めているのが法人であること自体なのか、社会保険の加入や建設業許可なのかを確認してください。理由によっては、個人のまま許可を取る、加入状況を書類で示すといった方法で足りることもあります。取引の継続を左右する話なので、元請の担当者に具体的な条件を聞いたうえで、税理士に損得を試算してもらいましょう。
法人化したら、国民健康保険と国民年金はどうなりますか
役員報酬を受け取る場合、法人の健康保険・厚生年金に加入するため、国民年金からは外れ、国民健康保険も脱退の手続きが必要です。建設国保などの国保組合に加入している人は、健康保険の適用除外の承認を受けると続けられる場合があるので、設立前に組合と年金事務所に確認してください。
役員報酬をゼロにすれば社会保険料はかかりませんか
役員報酬がなければ、標準報酬月額にもとづく保険料も発生しません。ただし、その場合は生活費をどう確保するか、国民健康保険・国民年金に自分で加入し続ける必要があるかなど、別の問題が出てきます。税務上も社会保険上も扱いが複雑になるため、自己判断せず、税理士や社会保険労務士に相談してください。
まとめ
- 法人化のタイミングは「所得○○万円」で一律に決まらない。税金と社会保険料の合計で、個人のままと比べる
- 所得税は5〜45%の累進。中小法人の法人税は年800万円以下の部分が15%(令和9年3月31日までに開始する事業年度)
- 法人は社長1人でも健康保険・厚生年金に加入が必要。保険料はおおむね役員報酬の約3割で、全額が自分の会社の負担になる
- 課税所得が330万円未満なら、法人化より青色申告・小規模企業共済・経営セーフティ共済が先。900万円以上なら試算の価値が高い
- インボイス登録をするなら「設立2年免税」は当てにしない。個人向けの3割特例は法人には使えない
- 500万円以上の工事は建設業許可の問題。許可は個人でも取れ、法人成りなら事前認可で引き継げる
- 最終判断は、自分の数字で税理士に試算してもらってから
一人親方の消費税の負担については一人親方のインボイス、2026年10月からの改正点、ケガへの備えは一人親方の労災保険・特別加入、入金までの資金繰りは一人親方でも使えるファクタリングで解説しています。
参考資料
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」 Web
- 国税庁「No.5759 法人税の税率」 Web
- 中小企業庁「中小企業の法人税率の軽減」 Web
- 総務省「法人住民税・法人事業税」 Web
- 東京都主税局「個人事業税」 Web
- 国税庁「No.1410 給与所得控除」 Web
- 国税庁「No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」 Web
- 日本年金機構「適用事業所と被保険者」 Web
- 日本年金機構「年金Q&A(個人事業を法人化し、従業員を雇わない場合の社会保険)」 Web
- 日本年金機構「国民年金保険料」 Web
- 全国健康保険協会「令和8年度保険料額表(令和8年3月分から)」 Web
- 厚生労働省「厚生年金保険料率の引上げが終了します」 Web
- 国土交通省「建設業における社会保険加入対策について」 Web
- 国土交通省「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」(令和7年12月10日改訂) PDF
- 国土交通省「建設業の許可とは」 Web
- 国土交通省「許可の要件」 Web
- 国土交通省 関東地方整備局「建設業の譲渡・合併・分割・相続の認可について」 PDF
- 東京都「建設業許可における社会保険加入の要件化について」 PDF
- 長野県「適切な保険について(社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン)」 PDF
- 国土交通省監修「建設キャリアアップシステム 下請事業者向け手引き」 PDF
- 国税庁「No.6501 納税義務の免除」 Web
- 国税庁「No.6503 新設法人の納税義務の免除の特例」 Web
- 国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」 Web
- 国税庁「個人事業者の方へ インボイス制度に関するお知らせ 令和8年度税制改正特集」 PDF
- 国税庁「新たに事業を開始した個人事業者・新たに設立された法人の登録」 PDF
- 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」 Web
- 中小機構「小規模企業共済 加入資格」 Web
- 中小機構「小規模企業共済 制度の概要」 Web
- 中小機構「経営セーフティ共済 制度の概要」 Web
- 中小機構「経営セーフティ共済 掛金について」 Web
- 国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」 Web
- 国税庁「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」 Web
- 日本公証人連合会「定款認証」 Web

