本記事にはプロモーション(広告)が含まれます。制度の内容と日付は国土交通省・公正取引委員会・中小企業庁・金融庁・全国銀行協会の公表資料をもとに記載しており、報酬の有無によって内容を変えることはありません。詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。
「元請から手形でもらっていたが、これからどうなるのか」「手形を割り引いて給料日を乗り切ってきたのに、それができなくなるのでは」。紙の手形の廃止が近づき、こうした不安を抱える専門工事会社や工務店は少なくありません。ニュースでは「2026年に手形廃止」と言われますが、実際には日付ごとに起きることが違います。
この記事では、1級土木施工管理技士で、ゼネコンの施工管理を約10年経験した運営者が、手形廃止のスケジュール、建設業に適用されるルール(建設業法と取適法の違い)、受け取る側・支払う側の影響、資金繰りの対策を整理します。ファクタリングの手数料を年率に直すといくらになるかも、正直に書きます。
この記事の要点
- 多くの金融機関が紙の手形・小切手の最終振出期限を2026年9月30日に設定。10月1日以降は、原則として当座預金から手形で支払えない
- 電子交換所での手形・小切手の交換は2027年3月31日で廃止(全国銀行協会)。手形がすぐ無効になるわけではないが、現金化は難しくなる
- 2026年1月施行の取適法は手形払いを禁止したが、建設工事の下請は取適法の対象外。建設業法(支払は1か月以内・50日以内、労務費は現金に配慮)で規律される
- 代わりの支払手段はでんさい(電子記録債権)か振込。でんさいなら期日前の割引・譲渡・分割ができる
- 穴埋めの選択肢は、でんさい割引・当座貸越・ファクタリング・出来高払いの交渉。ファクタリングは年率に直すと高いので、短期のつなぎに限る
手形の割引に頼れなくなる前に、受注済みの注文書で資金化できるか確認する
この記事の対象読者
元請やハウスメーカーから工事代金を受け取る中小の専門工事会社・工務店の経営者と経理担当の方、自社も下請に代金を支払う立場の方を想定しています。記載内容は2026年10月20日時点の公表資料にもとづきます。法律の当てはめや税務の最終判断は、弁護士・税理士にご相談ください。
手形廃止のスケジュール:日付ごとに起きること
「2026年に手形廃止」は、一つの法律で一斉に禁止されるという意味ではありません。政府方針、法律の改正、銀行の取扱い終了が、少しずつ時期をずらして進んでいます。
| 時期 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 2021年6月 | 「5年後の約束手形の利用の廃止に向けた取組を促進」と閣議決定 | 成長戦略実行計画 |
| 2024年11月 | 「2026年の約束手形の利用の廃止に向けた取組を促進」と閣議決定 | 総合経済対策 |
| 2026年1月1日 | 取適法(旧下請法)施行。対象取引で手形払いを禁止 | 公正取引委員会・中小企業庁 |
| 2026年9月30日 | 多くの金融機関が設定した手形・小切手の最終振出期限 | 公正取引委員会・中小企業庁の要請文 |
| 2027年3月31日 | 電子交換所での手形・小切手の交換を廃止 | 全国銀行協会 |
| 2027年4月1日 | 支払告示(受領から60日を超える支払の禁止)施行。建設工事は対象外 | 公正取引委員会 |
※政府方針の記載は、全国銀行協会が中小企業庁の研究会に提出した資料(2025年11月)による。
すでに「振り出せない」段階に入っている
全国銀行協会は、金融機関によっては最終振出期限を設けており、10月1日以降は原則として手形・小切手を用いた当座勘定からの支払いができなくなると案内しています。最終振出期限は金融機関ごとに違うため、自社の取引銀行の期限は全国銀行協会の一覧か、銀行の窓口で確認してください。
受け取る側にとって大事なのは、期限を過ぎて振り出された手形は、受け取っても資金化できない場合があるという点です(全国銀行協会)。2026年10月以降の日付で振り出された紙の手形が届いたら、すぐに振出人と自社の銀行に確認しましょう。
2027年4月以降も、手形がすぐ無効になるわけではない
全国銀行協会は2026年6月の公表で、電子交換所での交換終了日を2027年3月31日と明確にしました。同時に「2027年4月1日に手形・小切手が使えなくなるわけではない」とも説明しています。ただし4月以降は電子交換所を通らず、金融機関どうしが郵送などで個別に決済する形になり、取扱いの有無や方法は各金融機関が変更しうるとしています。実務上は、紙の手形は「持っていても現金にしにくいもの」になると考えたほうが安全です。
すでに多くの金融機関が、手形帳の発行終了や、2027年4月以降を期日とする手形の取立受付の終了など、前倒しで取扱いを縮小しています(全国銀行協会)。
建設工事は取適法の対象外。建設業法で規律される
2026年1月1日、下請法が改正されて「中小受託取引適正化法(取適法)」になりました。手形払いの禁止はこの法律の目玉ですが、建設業の方は適用範囲に注意が必要です。
取適法で変わったこと
- 対象取引での手形払いの禁止(支払遅延に当たる)
- 電子記録債権やファクタリング等でも、支払期日までに代金相当額を得ることが難しいものは禁止
- 支払期日を受領から60日以内に定める義務は、下請法から引き続き適用
- 資本金に加えて従業員数の基準(300人、役務提供委託等は100人)を追加
(公正取引委員会「中小受託取引適正化法の概要」令和7年9月)
なぜ建設工事は対象外なのか
公正取引委員会の説明資料では、建設業法に規定される建設業を営む者が業として請け負う建設工事は、取適法の対象にならないとされています。理由は、建設工事の下請負には建設業法に似た規定があり、別に適正化が図られているためです。
つまり「元請→一次→二次」という工事の下請代金には、取適法の手形禁止は直接かかりません。かかるのは建設業法です。一方で、建設会社が行う取引でも、建設工事以外の委託(運送の委託など)は取適法の対象になりうるので、自社の取引が当てはまるかは公正取引委員会・中小企業庁の資料で確認してください。
建設業法の支払ルール
| 項目 | 建設業法の内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 支払期限 | 元請が注文者から出来形・完成の支払を受けた日から1か月以内、かつできる限り短い期間内 | 第24条の3 |
| 特定建設業者の期限 | 下請の引渡し申出の日から50日以内(下請が特定建設業者・資本金4,000万円以上の法人の場合を除く) | 第24条の6 |
| 労務費の現金払い | 下請代金のうち労務費相当分は現金で支払うよう適切に配慮 | 第24条の3第2項 |
| 割引困難な手形 | 特定建設業者は、一般の金融機関で割引を受けにくい手形を交付してはならない(上と同じく、下請が特定建設業者・資本金4,000万円以上の法人の場合を除く) | 第24条の6第3項 |
※国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン(第12版)」(令和8年1月)にもとづく。
ガイドラインでは、特定建設業者が手形期間60日を超える手形で支払うと、第24条の6第3項に違反するおそれがあると示しています。また、全額手形払いや、労務費相当分に満たない額だけを現金にして残りを手形にすることは「望ましくない行為」とされています。
さらにガイドラインは、取適法で手形払いが禁止されたことなどを踏まえ、建設業界でも発注者を含めた関係者全体で、約束手形の利用廃止、前金払等の充実、振込払いへの移行、支払サイトの短縮に努めるよう求めています。法律上は建設工事の手形払いが一律禁止されたわけではありませんが、銀行側で手形が振り出せなくなった以上、支払手段の切り替えは避けられません。
発注者にも支払条件の改善が求められている
国土交通省は2026年8月、主要な民間発注者団体あてに通知を出し、建設工事など発注から納品までが長い取引について、前払・期中払の比率を高めるなど支払条件の改善に努めるよう求めています。公正取引委員会と中小企業庁も2026年9月の要請文で、同じ趣旨を産業界に求めました。下請側が出来高払いや前払いを相談するときの根拠として使える資料です。
受け取る側(専門工事会社・工務店)への影響
運営者の経験
運営者がゼネコンに在籍していたころ、下請への支払いは現金と手形が中心でした。在籍していた会社では、その後、最終的に現金払いに切り替わっています。元請によって切り替えの時期や方法は違うので、取引先ごとに支払条件を確認しておくことが大切です。
「手形割引」で資金を回すやり方が使えなくなる
これまで手形を受け取った会社は、満期まで待つか、銀行で割り引いて早めに現金にするのが一般的でした。紙の手形がなくなれば、手形割引という手段そのものが消えます。手形割引を毎月の資金繰りに組み込んでいた会社ほど、影響は大きくなります。
でんさいに切り替わる場合
手形に代わる手段の代表が「でんさい」です。でんさいは、全国銀行協会が設立した株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)が扱う電子記録債権です。でんさいネットの案内では、受け取る側には次のような特徴があります。
- 支払期日に口座へ自動入金される。取立の手続きがいらない
- 支払期日前に割引や譲渡ができ、必要な分だけ分割して使える
- 印紙税がかからず、紛失・盗難の心配がない
注意点は、受け取るにも取引銀行でのでんさいの利用申込みが必要なことです。インターネットバンキングの契約がなくても使える「でんさいライト」もあり、初期契約料と月額基本手数料は無料、発生記録や譲渡記録などの1件ごとの手数料がかかる仕組みです(でんさいネット)。割引の可否や手数料は窓口の金融機関によって違います。
振込に切り替わる場合
振込なら、入金された時点で現金です。ただし、支払日が手形の満期日と同じ時期に設定されると、「割引で早めに現金化する」手段がない分、かえって資金繰りが苦しくなることがあります。切り替えの連絡が来たら、支払サイトがどうなるかを必ず確認してください。
確認したい3点
- 取引先ごとに、今後の支払手段(でんさい・振込)と支払日
- 手持ちの紙の手形の振出日・満期日と、取引銀行の取立受付の期限
- 労務費相当分が現金で支払われているか(建設業法第24条の3第2項)
支払う側(自社も下請に払う立場)への影響
一次下請として二次に払う会社や、職人・協力会社に払う工務店は、支払側でもあります。これまで手形で支払っていた場合、支払時期を先に延ばす手段が使えなくなり、現金を早く用意する必要が出てきます。
- でんさいで支払う場合も、取引銀行との利用契約が必要
- 入金は長いサイトのでんさい、支払は振込という「ずれ」が起きると、手元資金が先に出ていく
- 一方で、手形の印紙代・郵送料・保管の手間はなくなる
元請の立場では一般に、下請代金の支払条件は契約書(注文書・請書)の支払条件欄で確認します。支払手段が変わるなら、契約書の記載も合わせて見直すのが基本です。
資金繰りの対策:4つの方法を比べる
入金が遅いことによる資金不足は、次の方法で埋めるのが一般的です。費用の安さだけでなく、準備にかかる時間も比べてください。
| 方法 | 仕組み | 向く場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| でんさいの割引 | 受け取ったでんさいを期日前に銀行で現金化 | 取引先がでんさいで払ってくれる | 銀行の審査・割引枠が必要。割引料がかかる |
| 銀行の当座貸越 | 枠の範囲で必要なときに借り、入金で返す | 入金と支払のずれが毎月起きる | 審査があり、枠の設定に時間がかかる。決算内容が影響する |
| ファクタリング(注文書・請求書) | 売掛債権や受注した注文書を専門会社に売って早く現金化 | 急ぎで、銀行の手続きが間に合わない | 手数料が高く、年率に直すと借入より大幅に高いことが多い |
| 出来高払い・前払いの交渉 | 工事の進み具合に応じて途中で払ってもらう | 工期が長い、材料費が先に出る工事 | 契約前の交渉が基本。出来高の確認書類を整える必要がある |
出来高払いは、費用がかからない点で最も有利な対策です。建設業法第24条の3は、元請が注文者から出来形部分の支払を受けたら、1か月以内に下請へ相応の代金を払うよう定めています。元請に出来高払いの条件があるかを聞き、自社の契約にも反映してもらうのが第一歩です。
ファクタリングの手数料は年率に直して比べる
ファクタリングは借入ではなく債権の売却なので、手数料は「◯%」と1回分で示されます。ところが、早く受け取れる日数が短いほど、年率に直した負担は大きくなります。計算の目安は次のとおりです。
年率換算の目安 = 手数料率 × 365日 ÷ 早まる日数
| 手数料率(仮) | 早まる日数 | 年率換算の目安 |
|---|---|---|
| 3% | 30日 | 約36.5% |
| 5% | 30日 | 約60.8% |
| 5% | 60日 | 約30.4% |
| 10% | 60日 | 約60.8% |
※手数料率は計算例として置いた仮の数字です。実際の手数料は会社・契約方式(2社間・3社間)・取引先の信用などで変わります。複利は考えない単純な目安です。
銀行の借入と比べると、ファクタリングの負担はかなり重くなります。毎月の資金不足をファクタリングで埋め続けると、手数料で利益が削られていきます。使うのは「大きな工事の材料費が先に出る」「銀行の手続きが間に合わない」といった一時的な場面に限り、並行して当座貸越や出来高払いの交渉を進めるのが現実的です。
また金融庁は、ファクタリングを装った違法な貸付け(ヤミ金融)に注意するよう呼びかけています。債権額に比べて買取額が著しく低い、回収できなかったときに買い戻しや返金を求められる、といった契約は貸付けと判断されることがあります。契約前に、手数料の総額と償還請求権の有無を必ず書面で確認してください。
建設業でのファクタリングの基本は建設業のファクタリング、工事の受注段階で使える方式は注文書ファクタリングで詳しく解説しています。
複数のファクタリング会社の条件を比べたい法人の方は、一括申込みのサービスがあります。¥Todayは法人限定のため、個人事業主の方は対象外です。
法人の方:複数社の手数料と条件をまとめて比べる
個人事業主として工務店や専門工事を営んでいる方は、個人事業主も申し込めるサービスを選んでください。
個人事業主の方も:請求書の買取条件をオンラインで確認する
今のうちにやっておくこと
- 資金繰り表を作り直す:手形割引で前倒ししていた入金を、実際の入金日に置き直す
- 取引銀行に相談する:でんさいの利用申込み、割引枠、当座貸越の枠。金融機関にはサイト短縮に取り組む事業者の資金繰り相談に丁寧に応じるよう要請が出ています(公正取引委員会・中小企業庁、2026年9月)
- 元請に支払条件を確認する:支払手段、支払日、出来高払い・前払いの有無
- 自社の支払条件も見直す:協力会社への支払を手形から振込・でんさいへ。労務費相当分は現金で
- 会計処理を税理士と確認する:でんさいの割引・譲渡、ファクタリング手数料の処理
よくある質問
2026年10月以降に紙の手形を受け取ったら、どうすればいいですか
まず振出日と、振出人の銀行の最終振出期限を確認してください。期限後に振り出された手形は資金化できない場合があります(全国銀行協会)。受け取る前に、でんさいか振込に変えてもらえないか振出人と相談するのが確実です。
建設業では手形払いが法律で禁止されたのですか
取適法の手形払い禁止は、建設工事の下請には適用されません。建設工事は建設業法で規律され、特定建設業者による割引困難な手形の交付の禁止や、労務費相当分を現金で払う配慮などが定められています。ただ、銀行側で紙の手形の振出し・交換が終わるため、実務上は手形以外の支払手段への切り替えが進みます。
でんさいは手形と同じように割り引けますか
でんさいは支払期日前に割引や譲渡ができ、必要な額だけ分割して使えます(でんさいネット)。ただし割引は金融機関の審査があり、取扱いや手数料も金融機関によって違います。取引銀行に事前に確認してください。
2027年4月以降も手形を持っていたら紙切れになりますか
全国銀行協会は「2027年4月1日に手形・小切手が使えなくなるわけではない」としています。ただし電子交換所を通らない個別の決済になり、取扱いは金融機関ごとに変わりえます。満期が2027年4月以降の手形は、早めに銀行と振出人に相談してください。
まとめ
- 多くの金融機関で紙の手形・小切手の最終振出期限は2026年9月30日。電子交換所での交換は2027年3月31日に廃止
- 取適法は手形払いを禁止したが、建設工事の下請は対象外。建設業法の支払ルール(1か月以内・50日以内、労務費は現金に配慮、60日超の手形は違反のおそれ)が適用される
- 代わりの支払手段はでんさいか振込。でんさいなら期日前の割引・譲渡・分割ができる
- 手形割引が使えなくなる分は、出来高払いの交渉、当座貸越、でんさい割引で埋めるのが基本
- ファクタリングは年率に直すと高い。急ぎの一時的なつなぎに限り、契約内容を書面で確認する
ファクタリングの仕組みと選び方は建設業のファクタリング、受注段階で資金化する方法は注文書ファクタリングで解説しています。一人親方の方は一人親方でも使えるファクタリングもあわせてご覧ください。
参考資料
- 全国銀行協会「紙の手形・小切手利用廃止へ」 Webページ
- 全国銀行協会「電子交換所の交換廃止時期の決定および手形・小切手交換廃止時期の明確化について」(2026年6月18日) Webページ
- 金融庁「手形・小切手機能の全面的な電子化について」 Webページ
- 公正取引委員会「約束手形の利用廃止を踏まえたサプライチェーン全体での支払の適正化について」(令和8年9月2日) Webページ
- 公正取引委員会・中小企業庁 金融機関あて要請(令和8年9月1日) PDF
- 公正取引委員会「支払告示」 Webページ
- 公正取引委員会「中小受託取引適正化法の概要」(令和7年9月、改正ポイント説明会資料) PDF
- 全国銀行協会「手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた金融界の取組状況について」(中小企業庁 研究会資料、2025年11月) PDF
- 国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン(第12版)-元請負人と下請負人の関係に係る留意点-」(令和8年1月) PDF
- 国土交通省「下請契約及び下請代金支払の適正化並びに施工管理の徹底等について」(令和8年8月3日) PDF
- でんさいネット「でんさいのメリット 受取利用編」 Webページ
- でんさいネット「でんさいライト」 Webページ
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」 Webページ

