安全・労務管理SaaSの比較|グリーンサイト連携で選ぶポイント

「グリーンサイトに毎回同じ内容を何度も入力させられる」「協力会社ごとに提出方法がバラバラで、現場事務所の確認作業が終わらない」「元請から急に別のツールへの登録を求められて対応に追われる」——建設現場の労務安全書類まわりでは、こうした悩みが後を絶ちません。とりわけ「グリーンサイト」は業界標準ともいえる存在になっている一方、元請によって指定するツールが異なるため、協力会社側は複数サービスへの対応を迫られがちです。

本記事では、建設業の安全・労務管理SaaSの中から代表的な3サービス「グリーンサイト」「Greenfile.work(グリーンファイルドットワーク)」「Buildee(ビルディー)」を取り上げ、それぞれの位置づけ・機能・料金・グリーンサイトとの関係性を比較します。建設SaaS全体の選び方については、まず建設SaaSの選び方完全ガイド|現場目線でわかる失敗しない7つの比較軸で7つの比較軸を押さえたうえで、本記事を読み進めていただくと選定の精度が上がります。

目次

この記事の対象読者

本記事は主に、労務安全管理体制の整備やIT投資の意思決定を行う経営者・経営層と、日々の安全書類の作成・提出・確認を担う現場監督・安全衛生担当者を想定読者としています。施工管理全体の比較についてはANDPAD・Photoruction・KANNA徹底比較|施工管理システムはどれを選ぶべきかをあわせてご覧ください。

なぜ今、安全・労務管理のSaaS化が必要なのか

安全・労務管理のSaaS化が注目される背景には、主に3つの要因があります。

  • 書類作成・確認の負担増:労務安全書類(グリーンファイル)は種類が多く、同じ情報を複数の帳票に転記する手間や、記入漏れ・不備による差し戻しが現場事務所の大きな負担になっている。
  • 建設キャリアアップシステム(CCUS)対応の必要性:CCUSの活用が業界全体で原則化される方向にある中、就業履歴データの登録・更新をいかに効率化するかが各社共通の課題になっている。
  • 元請ごとに指定ツールが異なる混乱:協力会社は現場・元請ごとに異なるツールへの対応を迫られることが多く、「結局どのサービスに登録すればよいのか」が分かりにくい状態になりがち。

これらの課題に対し、クラウド型の安全・労務管理SaaSは「入力の一元化・自動チェックによる不備防止」「CCUSとのデータ連携による二重入力の削減」「クラウドでの提出・確認の迅速化」という形で解決を図ります。

本記事で扱う「安全・労務管理SaaS」の範囲について

この領域を理解するうえでまず押さえておきたいのが、「グリーンサイト」自体が業界最大手の労務安全書類クラウドサービスであり、多くの元請企業がこれを指定しているという事実です。そのため協力会社にとっての実務的な関心は、「グリーンサイトをそのまま使うか」「グリーンサイトの代わりになる無料サービスはないか」「施工管理全体を一体化したツールの中でグリーンサイトとどう付き合うか」という比較軸になります。本記事では、業界標準であるグリーンサイトそのものに加え、協力会社が無料で使える代替サービスとして知られるGreenfile.work、施工管理業務全体をカバーしながら労務安全機能を持つBuildeeという、性格の異なる3サービスを比較対象としています。いずれも建設キャリアアップシステム(CCUS)の就業履歴データ登録標準API連携認定システムに認定されており、CCUSとの連携という点では共通しています。

安全・労務管理SaaSを選ぶ3つの軸

1. 元請の指定状況との整合性

安全・労務管理SaaSは、自社だけで自由に選べるとは限りません。現場に入る元請がどのサービスを指定しているかによって、協力会社側の実質的な選択肢は左右されます。まずは自社が関わる現場でどのサービスが指定されているかを確認することが出発点になります。

2. 費用負担の構造(元請と協力会社の違い)

この領域のサービスは、元請と協力会社とで料金体系が大きく異なるのが特徴です。協力会社の費用負担がゼロか有償かは、特に中小の専門工事業にとって導入判断を左右する重要なポイントです。

3. 施工管理業務全体との一体化レベル

労務安全書類の作成・提出に特化しているのか、調整会議・入退場管理・進捗管理など施工管理業務全体の一部として労務安全機能を提供しているのかは、サービスによって設計思想が大きく異なります。

安全・労務管理SaaS 早見比較表

グリーンサイト Greenfile.work Buildee
提供会社 エムシーディースリー株式会社(旧MCデータプラス) シェルフィー株式会社 株式会社リバスタ(旧イーリバースドットコム)
サービスの位置づけ 労務安全書類(グリーンファイル)の作成・提出・管理に特化した業界標準サービス 労務安全書類の作成・管理に特化した、協力会社無料が特徴のクラウドサービス 調整会議・入退場管理・労務安全などを含む施工管理オールインワンサービスの一機能
主な対象・普及状況 大手ゼネコンを中心に元請の指定率が高い業界最大手 登録企業数30万社超(2026年2月時点)、全国47都道府県で導入 導入元請500社超、導入現場17,200件超(大林組・鹿島建設・大成建設・戸田建設など)
協力会社の費用 有償(ID利用料が年間契約、目安として1名プラン年額5,280円〜) 無料 無料(労務安全・調整会議・入退場管理とも協力会社は無償利用可)
元請の費用目安 ID利用料+プロジェクト(現場)利用料が別途必要 要問い合わせ 基本料金月額30,000円(1支店分)+労務安全月額6,000円/現場など機能ごとに加算
CCUS連携 対応(就業履歴データ登録標準API連携認定システム、CCUSデータ連携サービス) 対応(API連携による就業履歴データ登録の効率化) 対応(就業履歴データ登録標準API連携認定システム)

※価格・登録企業数は本記事執筆時点(2026年9月)で各社が公開している情報に基づきます。料金体系は元請・協力会社の立場や契約プランによって細かく変動するため、最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。

グリーンサイト

グリーンサイトは、エムシーディースリー株式会社(旧MCデータプラス)が提供する「建設サイト・シリーズ」の中核サービスで、労務安全書類(グリーンファイル)の作成・提出・確認をクラウド上で一元的に行えます。一度入力した内容が複数の帳票に自動反映される仕組みや、健康診断・免許・建設業許可などの有効期限リマインド機能により、記入漏れや期限切れの防止に強みを持ちます。大手ゼネコンを中心に元請の指定率が高く、業界標準としての地位を確立している点が最大の特徴です。

料金体系は元請と協力会社とで構造が異なり、協力会社は「ID利用料」のみ(年間契約、目安として1名プラン年額5,280円〜10名プラン年額13,200円)で利用できるのに対し、元請企業は「ID利用料」に加えて管理する現場(プロジェクト)数に応じた「プロジェクト利用料」が必要になります。年間契約が基本で途中解約による返金がないため、導入タイミングは計画的に検討する必要があります。CCUSとの連携では「CCUSデータ連携サービス」を通じて、グリーンサイトに蓄積した就業履歴データをCCUSへ自動連携できる仕組みも整っています。

Greenfile.work(グリーンファイルドットワーク)

Greenfile.workは、シェルフィー株式会社が提供する安全書類電子化サービスです。最大の特徴は、協力会社が完全無料で利用できる点にあり、登録企業数は2026年2月時点で30万社を突破しています。直感的な操作性と、協力会社側の費用負担がないことが評価され、大手ゼネコンから一人親方まで幅広い層に導入が進んでいます。全建統一様式に準拠した安全書類の作成に対応しており、CCUSとのAPI連携による就業履歴データ登録の効率化にも対応しています。

元請企業側の料金は公式サイト上で明記されておらず、問い合わせが必要です。グリーンサイトが業界最大手として元請の指定率が高いのに対し、Greenfile.workはコスト面で有利になりやすい立ち位置のサービスといえます。ただし、元請がグリーンサイトを指定している現場では、協力会社側の意向にかかわらずグリーンサイトへの対応が必要になる点には注意が必要です。

Buildee(ビルディー)

Buildeeは、株式会社リバスタ(旧イーリバースドットコム)が提供する建設現場の施工管理サービスです。「調整会議」「労務安全」「入退場管理」など複数の機能モジュールに分かれており、労務安全書類の作成・管理はそのうちの一機能という位置づけになります。大林組・鹿島建設・大成建設・戸田建設など複数のスーパーゼネコンで導入されており、2024年時点で導入現場数は17,200件を超えています。労務安全機能では、会社情報や作業員情報、資格情報、保険加入状況などを登録することで、施工体制台帳や作業員名簿といった労務安全書類を自動作成でき、AIによる入力ミス抑制機能も追加されています。

料金は元請企業向けに、基本料金月額30,000円(1支店分、複数機能利用時も共通)に加え、調整会議月額9,800円・労務安全月額6,000円・入退場管理月額2,000円がいずれも現場ごとに発生する構成です。協力会社は全機能を無償で利用できます。労務安全書類の作成・提出だけでなく、作業間連絡調整や現場入退場管理まで含めて現場業務全体を標準化したい元請企業にとっては、単体の安全書類サービスよりも導入メリットを感じやすい設計といえるでしょう。なお、CCUSの就業履歴データ登録標準API連携認定システムにも認定されています。

経営者目線での選び方

経営者・経営層の立場では、「どのサービスが高機能か」よりも「自社が関わる元請の指定状況と、自社の立場(元請か協力会社か)に照らして、実質的にどれだけの費用と工数がかかるのか」を軸に見るべきです。協力会社としての利用が中心であれば、Greenfile.workやBuildeeのように無償で使えるサービスの比重が大きくなりますし、元請としてグリーンサイト以外のツールを新たに指定する場合は、協力会社への浸透コスト(説明・サポートの負担)も含めて検討する必要があります。複数の現場・複数の元請とやり取りする協力会社では、結果的に複数サービスへの登録が避けられないケースも多く、「1つに絞る」前提ではなく「複数併存を前提にどう運用を効率化するか」という発想も必要になります。

現場監督・安全衛生担当者目線での選び方

日々の安全書類作成・提出を担う立場では、「今まで紙やExcelで管理してきた作業員情報や資格情報を、どこまでシステムへ移行できるか」「同じ情報を何度も入力させられずに済むか」が最大の関心事になるはずです。特に複数の現場・複数の元請に関わる協力会社では、グリーンサイト・Greenfile.work・Buildeeなど複数サービスへの重複入力が発生しやすいため、どのサービスがCSV一括登録やCCUSとのデータ連携に対応しているかを確認しておくと、日常運用の負担を大きく減らせます。健康診断や免許・資格の有効期限管理についても、リマインド機能の有無や通知方法(メール・アプリ通知など)は製品によって差があるため、実際の画面や資料で確認しておきたいポイントです。

Ochi視点:現場を見てきた立場からのコメント

ゼネコンの現場管理を10年経験した立場から見ても、労務安全書類まわりの負担は現場事務所にとって想像以上に大きいものでした。特に協力会社数が多い現場では、書類の提出状況を一件一件確認し、不備があれば差し戻して再提出を待つというやり取りだけでかなりの時間を取られます。グリーンサイトのような業界標準サービスが普及したこと自体は望ましい変化だと感じる一方で、元請ごとに指定ツールが異なる状況が続く限り、協力会社側の負担が根本的になくなるわけではない、というのが実感です。

ただし、正直にお伝えすると、私自身はグリーンサイト・Greenfile.work・Buildeeのいずれも実際の現場で使用した経験はありません。以下のコメントは「特定サービスを使った感想」ではなく、現場を10年見てきた実務者としての一般的な視点であることをご了承ください。安全・労務管理SaaSを選ぶ・導入する際は、自社単独の使いやすさだけでなく、「取引先の元請・協力会社がどのサービスを使っているか」という業界内の力学を踏まえて判断することが、結果的に一番現実的な選び方になると考えます。

導入時に確認しておきたいポイント

  • 元請の指定状況:現在・今後関わる現場の元請企業がどのサービスを指定しているか
  • 自社の立場(元請/協力会社)による費用差:協力会社としての利用は無料か有償か、元請として導入する場合の費用構造
  • CCUSとの連携範囲:就業履歴データの登録・更新をどこまで自動化できるか
  • 既存データの移行・重複入力の回避:作業員名簿や資格情報などをCSV一括登録できるか、複数サービス間でのデータ引き継ぎは可能か
  • サポート体制:導入時の初期設定サポート、問い合わせ対応の窓口

まとめ

安全・労務管理SaaSは、単なる「書類作成の効率化ツール」ではなく、CCUS対応や現場全体の安全管理体制を左右する重要なインフラです。業界標準としての実績と機能の網羅性を重視するなら「グリーンサイト」、協力会社としての費用負担をとにかく抑えたいなら「Greenfile.work」、労務安全だけでなく施工管理業務全体を一体化して効率化したいなら「Buildee」が、それぞれの検討候補になります。ただし、この領域は自社単独の好みだけで選べるとは限らず、元請の指定状況や取引先との力学も踏まえた判断が欠かせません。自社が関わる現場の状況を整理したうえで、必要に応じて複数サービスとの付き合い方を検討することをおすすめします。

建設SaaS全体の選び方を体系的に押さえたい方は、あわせて建設SaaSの選び方完全ガイドもご覧ください。


参考:各社公式サイト(グリーンサイトGreenfile.workBuildee

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次